8/9:川内原発の稼働中止要請行動レポート

日向灘での地震における「川内原発の稼働の中止を求める請願」を九州電力へ提出し、回答を受領した経緯をご報告します。(くまもと未来ネット代表 原 育美)

◆要請の経緯

 8月8日16時43分、日向灘で震度6弱、マグニチュード7.1の地震が発生。直後に初めてとなる『南海トラフ地震臨時情報』が出され、直後に電力各社は原子力発電施設に地震による影響はなく平常通りの運転をしていると発表しました。しかし、テレビ画面は南海トラフ地震情報を24時間体制で伝える画面になったこともあり、四国、九州全域は緊張感に覆われました。
 地震発生翌日、「原発再稼働を考える山都町民の会」の呼びかけで「くまもと未来ネット」を含む県内の12団体が連名で九州電力に対してして以下3項目の要請を行い、私たちは回答を待ちました。

川内原発の稼働の中止を求める要請(リンク)
 1「ただちに川内原発の稼働を中止すること」
 2「今回の地震による影響がないか詳しく調べ、公開すること」
 3「地震による事故回避の方策を直ちに取ること」

◆九電の回答と意見交換(後述)

 9月4日14時、九電熊本支店において私たちから提出された要望に対する回答と意見交換が行われました。回答受け取りに出向いたのは、「原発再稼働を考える山都町町民の会」、「嘉島の命とみらいを守る会」、「矯風会熊本」、「水と緑ネット」、「矢部同和教育研究サークル」、「ともの会(有志)」、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会熊本」、「放射能汚染水の海洋放出に反対する熊本市民の会」、「熊本原発止めたい女性たちの会」、「川辺川を守りたい女性たちの会」、そして「くまもと未来ネット」の関係者11名です。
 九州電力からは、企画・総務部広報グループ長の山崎さん、後藤さん、そして企画・総務部(原子力広報・防災担当)課長兼広報グループ課長の立仙さんの3名の担当職員が出席され、各要請に対する回答説明と、続く意見交換に2時間を費やしていただいたことは想定外の対応でした。

要請1「ただちに川内原発の稼働を中止すること」および、
要請2「今回の地震による影響がないか詳しく調べ、公開すること」への回答

 川内原発の安全性を確認し、運転中止の必要性は認められない。その理由は、今回の地震発生における川内原発2号機建屋での地震感知器の“震度は2”、“最大加速度は6.9”で、自動停止装置の設定数値を大きく下回っていたため2号機は停止することなく運転を続けたとのことでしたが、この点については地震観測データーと原発に設置している地震感知器の原子炉自動停止設定値を用いて説明されました。
 川内原発は岩盤に直接杭を打ち込み建設されているため耐震性は強い。放射線モニターの指示値にも変化はなく、外部環境への影響はなかったとのことでした。(別紙、資料①を提示し説明)

 資料①「日向灘での地震における川内及び玄海原子力発電所の状況について」(リンク)

要請3「地震による事故回避の方策を直ちに取ること」への回答

 福島原発事故後に改訂された原発の重大事故に備える全安全対策を全て行っている。福島原発事故後に大幅に改訂された原発の「重大事故に備えた安全対策」の新規制基準に対応し多種多様な対策を実施している。その総額は川内と玄海原発で9400億円を超す。保安体制は、24時間体制も点検を実施し、総延長120㎞の配管についても目視・打診などで確認を行っていることから事故回避は十分行われているとの説明でした。(別紙、資料②、資料③、九州電力のWebsiteを引用して説明)

 資料②「重大事故に備えた安全対策」(リンク)
 資料③「万が一の重大事故に備えた訓練」(リンク)
 九州電力Website引用:原子力発電所の安全確保に向けた取組みについて(リンク)

◆意見交換

 要請に対する回答と説明を聞いた後、質疑応答として意見交換の時間をとっていただきました。原発の安全性に対して歯に衣を着せぬ疑問、質問を投げかけましたが、九電がHPで公開している原子力発電に関する安全対策情報を確認しながら、丁寧に説明をしていただいたことは率直に感謝したいと思います。
 九電側の説明詳細については(資料参照)、福島原発事故後に原発の安全対策基準が改訂され、その新基準に沿った対策を実施した結果、川内原発と玄海原発併せて総額9400億超の費用を要したとのことでした。それでもなお原発事故に対する不安は払拭されず、廃棄物処理問題と併せて「本当に厄介な電源ですね!」という私の発言に対し、担当者も素直に頷かれたことには正直意外で驚きました。
 原発の稼働に関しては、電力会社としては国のエネルギー基本計画に沿って実施している。電力会社には“安い電気を安定的に供給することが最優先で求められている。(原発再稼働によって)九電の電気代は全国でも最も安いと説明があり、この説明に対して、私たちより「原発を維持するためのコストに関しては、安全対策や廃炉費用は国の支援があり、電力会社だけの努力で電気代が抑えられているわけではない。」と異論が出ましたが、それを否定されることはありませんでした。原発の安全対策や維持費に関しては国が多額の支援をしていることから、経済産業省や電力会社による原発は発電コストが最も安いという説明には到底納得しかねると言わざるを得ません。
 さらに、国は温暖化対策として原子力発電は温室効果ガスを排出しない電源と位置づけていて、今後原発の扱いがどうなるのか、我々としても第7次エネルギー基本計画での電源構成比率がどうなるのか注視していると言われました。
 市民団体からは、「原発もウラン採掘や工場建設時に二酸化炭素を排出しているのでゼロとは言えない。」「原発から出る海に放出される温排水が原発周辺の海水温度を3度ほど上げているので、海への影響は大きい。」また、「二酸化炭素では人は死なないが、放射能と人類は全く共存できない。」「原子力発電所で働く社員を被爆させてしまう電源とはいかがなものか?」など様々な疑問の声が出ました。

 電力会社の上層部(経団連)はともかく、職員としては安全確保に膨大な費用を要し、被ばくという危険に身を晒す過酷な現場職員の心労を伴い、廃棄物の処理さえ目途も立っていない原発という電源を、正直重荷と感じていることが垣間見られる意見交換となりました。

後日談

 この意見交換の記憶がまだ鮮明な9月中旬、オーストラリアに視察に行かれた飯田哲也氏と高橋洋氏の報告を聞く機会がありました。南オーストラリアでは、蓄電池を増強し短期間で再エネ導入74%を達成しているとのこと(9月9日の朝日GLOBEに詳しく紹介されています)。
 飯田さんは、「まったく新しい時代が来ていると感じた。2006年まではほぼ石炭と天然ガスだけで発電を行っていたが、そこからソーラーと風力が増え、2023年には全電力の75%を賄うまでになった。3年後には100%、最終的に電力需要の3倍の発電量を目指している。自国に化石燃料を持ちながらそれを封じ込めて再エネを輸出していこうという国と、資源を持たない、しかもフクシマを経験しながらそこにしがみつく日本の落差に驚く。現地を目の当たりにして専門家も戸惑いを隠せなかった。新しい技術をいい形で取り入れて広げていく。コミュニティバッテリーのしくみには、エネルギー自治、政策を決めていく民主主義のあり方にもかかわっていることにも感じ入った。」と語られています。
 新しいエネルギー文明が世界では始まっています。日本でも1日も早くと願わずにはいられません。

以上